「歯科衛生過程」 ~考える歯科衛生士へ~

 少子高齢化・医療の高度化・多様化など社会的環境の変化に伴い、歯科衛生士教育にも、さまざまなニーズが求められるようになり、平成22年には、さらなる歯科衛生士の資質向上を目的にすべての歯科衛生士学校の修業年数が3年以上となりました。
 また、対象者を包括的にみて、問題点をエビデンスに基づき論理的に解決に導く「歯科衛生過程」が歯科衛生教育に導入されるようになりました。本校では、1年次「歯科衛生士概論」、2年次の保健指導で「歯科衛生過程」を学びます。「歯科衛生過程」は「対象者が抱えている問題を明確化し、問題の解決方法を計画し、介入していくために必要な一連の思考と行動のプロセス」と定義されています。具体的には、歯科衛生アセスメント・歯科衛生診断・歯科衛生計画立案・歯科衛生介入・歯科衛生評価の5つとそれぞれを書面化することから構成されており、対象者の問題点や原因および解決方法を根拠と照らし合わせながら深く考え、行動していくこととなります。
 今回2年生(46回生)は、歯科衛生過程のプロセスと基本的な考え方を学び、事例演習を行いました。歯科衛生アセスメントでは、情報を整理・分類し、歯科衛生士が関わるべき問題があるかどうか確認が必要です。また、同時に歯科衛生介入の際に活用できる対象者の強みやデータ不足を見つけ出すことも必要となります。学生は各自が事例を読み取り、主観的情報(Sデータ)と客観的情報(Oデータ)に整理し、グループ毎にDarby とWalsh の歯科衛生ヒューマンニーズモデルの8つのモデルに分類しました。次に、対象者が抱える歯科衛生上の問題と原因を明確にする歯科衛生診断を行いました。ここでは「診断句」と「原因句」の2つの要素を組み合わせて表現するため、学生は、それぞれの情報の関連性を考察し確定していました。さらに、それぞれのニーズの優先順位を決定するため、診断のタイプや緊急性、対象者の考えや意志などを総合し、グループ討議を行いました。そして、歯科衛生診断で明示された問題を解決するために、歯科衛生計画として、長期目標と短期目標を設定し、歯科衛生士が行う「ケア計画」「指導計画」「観察計画」を立案しました。臨床ではこの後、歯科衛生介入へとなりますが、今回は、これら3つのプロセスまでを学会発表と同様の形式でプレゼンテーションを行いました。どのグループも、対象者の問題を解決するための根拠が述べられており、深く論議されたことが明確でした。また、iPad を使用し、聴講側に伝わりやすいようなレイアウトやアニメーションの工夫もみられました。
 歯科衛生過程は、歯科衛生士が毎日行う歯科衛生活動そのものですが、そこには、クリティカルシンキングが必要となります。卒後、歯科衛生活動において、今回の学びを活用し、患者を論理的に良い方向へ導くことのできる歯科衛生士に育つことを期待しています。
(専任教員 難波恵子)