現代の私たちのまわりには食物が豊富にあります。これはいったい幸せなことなのか、不幸なことなのか、と考えたこ とがあるでしょうか。「ない」より「ある」はうがいいにきまっていますが、ありあまるほどあって、しかもどんな種類のものでも手軽に入手できる、貪欲に美味を求めて、どんどん手を加えていく、そしていわゆる文明食をつくりあげました。

この文明食が、はたして人間をより健康に幸せにしたかどうか。その文明食が、もしも私たちの心身を退化させているとしたならば・・・・・。  食物は、生命と健康維持の根本という原点にかえって、食物と健康について考えてみましょう。



ここに一冊の本があります。「食生活と身体の退化−未開人の食事と近代食その影響の比較研究」。この本はアメリカの歯科医、ウエストン・A・プライス博士の著で、日本の歯科医、片山恒夫氏がほん訳したもの。(初版は1939年ですが、1945年に増版改訂され、1977年には9版が出版されています。日本語出版は1978年) 

この本には、プライス博士が十数年にわたって、世界各地の未開種族を訪ね、近代文明に接していない種族と、近代文明に接した種族の心身の健康状態の変化を、百数十枚の写真で実例を示しています。 つまり、近代文明社会と隔絶した僻地で大自然の法則にしたがって生活している種族は、ムシ歯もなく心身ともに健康であり、同じ種族でも近代文明と接触しはじめると、急速に心身の健康が侵されている現状を報告しています。そのいくつかの例を、日本での出版権者の諒解を得て、紹介してみましょう。


同じ種族で近代文明と接触した人々としなかった人々との比較

アラスカのエスキモー 近代文明とほとんど接触していない人たちで、その土地の産物を常食している種族は、0.09%〜0.22%しかムシ歯になっていないが、土地の産物と近代的な保存食を併用している地域の人は12〜13%がムシ歯になっており、主に輸入食品(近代食)に頼っている人たちは33〜41%がムシ歯になっています。
北米の森に住むインディアン 0ないし0.16%のムシ歯しかなく、文明と接触している別の集団では、ムシ歯は40%にも達しています
メラネシアのニューカレドニア島 原地食だけで生活している人のムシ歯は0.14%にすぎないのが、輸入食品を利用している集団では26%に達しています。
アフリカのスーダンのテラケカ族 一本のムシ歯もないが、スーダンでも近代化した地域の原地人は44.2%の人がムシ歯もち。


原地食で、顔立ちも歯もよい健康そのものの
ポリネシアの女性
近代生活を送るタヒチ人は、ひどいムシ歯
になっている。

近代食を摂り始めてから生まれた最初の世代でも、下顎の縮小化、著しく細長い顔などの奇形があらわれている。 ペルーのインディアンの親子。父親は正常だが、子どもは顔形も歯列弓にもひずみがあらわれている。

ムシ歯をほとんどもたないグループとムシ歯の多いグループを分けた最大の要因が、私たちが日ごろ馴れ親しんでいる近代文明食です。

プライス博士は「生命があらゆる面で十全であるためには、母なる大自然に従って生きなければならない」といっています。そして未開種族の人々がもつ聡明なる生活の知恵に学ぶところが多い ことを、いろいろな例で示してくれています。

近代社会との接触が少い、という理由で、彼らを「未開人」という呼びかたはいささか抵抗を感 じざるを得ません。彼らは、私たちの祖先ももっていたであろう生活文化を、忠実に継承している人たちであって、近代人こそ、祖先が蓄積してきた貴重な知恵を、いつの時代にか、あっさり捨て去ってしまった不明の償いを、今迫まられています。